(by S. Miyauchi, Professional Engineer, Doctor of Engineering, JSME Fellow)
ある中国の友人の娘さんが日本の建築系学科への留学を志望されており、少しネットを見た際、ある大学の卒業生は「建築学は歴史や文化、宗教、経済、政治等と関わりがあり、それを学ぶと、もっと広い分野の知識も同時に学ぶ」。また2019年のノーベル化学賞の吉野彰さんは好奇心旺盛、京大工学部時代には考古 学研究会で遺跡発掘に熱中との事。製品やニーズは社会や文化、歴史と直結しており、技術者はこれらにもっと強い関心を持つべきと思う。また「21世紀は科学の時代」、地球温暖化や省エネ、防災、金融工学等々、社会と科学は密接不可分になっている。
また超然と美しくまた厳しい自然や長い人間の歴史への強い興味・観察や探求心こそが、芸術や科学と技術、即ち「人の感性また知的活動の根源・原動力」であろう。私は子供の頃、小川が刻々と作り出す多様な流れや小波に心惹かれた。また母の実家で見た山水画が私の心に描く、様々に変化し滔々と無限に流れて行く川面に、美しさと共に強い好奇心を感じた。これらの現象の奥に潜む本質的なメカニズムを知りたいと思ったのが、私が流体屋になる一因となった。また「科学と芸術は人の知性と好奇心の発露」の点で、両者は本来は密接。中国では蘇軾(東坡)、欧ではレオナルドダヴィンチ。蘇軾は有能なテクノクラート的行政官かつ美食家かつ漢詩等が巧みな文人。杭州知事の際は、西湖と周辺の運河の大規模な浚渫、改修を行い、飲料や灌漑用水の確保、物流を盛んにした。杭州は唐以来、中国の穀倉地帯となった江南の米の集積地となり、大運河により都、開封へ送られた。また隣接する蘇州と共に茶や絹織物、磁器、工芸品の中心となり、後の南宋の杭州遷都の下準備をした。また西湖と彼が作った蘇堤での舟遊びは中国だけでなく日本の文人の憧れとなったが、私も杭州出張の帰国の午前中、蘇堤を散策した。
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